「イギリスの医療財源の配分方法・診療報酬の支払い方式について」  報告者: 一圓光彌氏(関西大学)

報告概要

主要国の医療保障制度と総医療費の動向を概観し、その後、現在の医療保障制度の環境に関する大きな変化として、@医療供給体制整備の時代から医療費適正化の時代への変化、A増加する非正規雇用者に対する保険適用と税財源の役割の増加、の2点を指摘する。このような医療保障制度の環境変化から、税方式の国だけでなく社会保険方式の国でも、所与の医療保障財源の公平な配分と効率的な利用が重要なテーマになり、保険者(社会保険の場合)や医療サービス支払機関(税方式の場合)への財源配分に、人頭配分の利用が一般化する傾向にある。人頭配分は、保険者等にその予算内での医療費管理を求める性格を持っている。税方式で国民の保健医療サービスを保障してきたイギリスには、合理的な予算配分方法を追求する長い歴史があるが、最近では、プライマリケア担当者が組織する機関PCT(プライマリケア・トラスト)がNHS予算の8割を支配するようになり、NHS予算の8割は、過去3年間の年齢階級別平均医療費を用いた人頭配分をベースに、各PCTに配分され、各PCTはこの予算を用いてプライマリケアを提供するだけでなく、病院トラストから病院の医療サービスを購入するようになっている。実際に患者を病院に紹介するのは、登録住民のプライマリケアを担当する一般医(GP)であるが、2004年から診療報酬が大幅に改革され、一般医に与えられる登録住民のための医療予算も登録住民の年齢別性別医療費をベースに支払われ(Global Sumと呼ばれ、実際のGPの収入の3割程度を占める)、一般医は経営者として、その予算を用いて診療所を維持し、スタッフを雇い、登録住民の診療に当たることになった。また、診療所のサービス向上や生活習慣病等の療養管理に関し、成果に応じた報酬が支払われるようになり、これがGPの収入の約5割を占めるに至っている。GPの報酬の残りの2割程度は得意分野で特別な医療を行ったり保健事業に協力するなどで得られる支払である。