「2004年年金改革による制度のゆくえ」   報告者:鎮目真人(同志社女子大) 

報告概要

報告では、年金制度における制度変化の形態を、制度の目的と手段の変化の組み合わ せから4つの類型(「制度調整的改革」、「制度代替的改革」、「漸進的根本改革」、 「ビックバン的根本改革」)に分類し、従来の公的年金改革がどのカテゴリーに当て はまるのか検討した。 厚生年金は1973年に実行された「漸進的根本改革」を経て従 前所得の保障がなされるようになり、国民年金は1985年に制度の適用対象を全国民に 拡大した「制度代替的改革」が実行されたといえる。直近の2004年の改革では厚生年 金、国民年金とも、マクロ経済スライドによる「制度調整的改革」がおこなわれた。 ただし、国民年金の給付水準は1960年代の水準に回帰する。その要因は、国民年金の 最低生活保障という目的が曖昧化されたからである。次の国民年金改革において,今 回の改革が踏襲されて給付削減が行われるならば,今回の改革は制度の「漸次的根本 改革」の先鞭をつけたものと位置づけられるだろう。