3.ケガをとりまく環境要因
親との関係
子どもの競技活動に親が強い関心を寄せるのは、競技レベルが高ければ高いほど当たり前かもしれないが、子どもの試合を必ず応援に来る親も少なくないこと、親のそうした行動は、おのずと子どもに「試合に出たい」という気持ちや、さらには、試合で結果を出して親の期待にこたえたいという気持ちを強く抱かせることは、一般にはあまり知られていないのではないだろうか。
私は小学校から母と二人三脚でバスケットをしてきてきました。私にとって母は一番のサポーターであり、私のバスケ人生には欠かすことの出来ない存在です。しかし母は、私にとって一番の理解者でもあるけれど、同時に私にとって一番プレッシャーを感じる存在であるかもしれません。それはなぜかと言うと、私自身小学校、中学校の時はどちらかと言うと、地元では目立っていた方で、私自身ちやほやされることはとても嬉しかったし、母にとって「自慢できる娘」であることに対しても、とてもやりがいを感じていたことは確かです。しかし高校では、強いメンバーが集まってくる高校を選んだため、スランプ時期も経験して、高校2年生では鼻を折るという大きなケガも経験して、地域の中、チームの中で、昔ほど飛び抜けているプレーヤーではなかったと思います。母は試合にはいつも足を運んでくれていたので、母に私のバスケットを披露する場所は試合のコートであって、いくら練習で調子が良くナイスプレーをしても、母は試合という舞台での結果しか見ていないので、その結果が悪かったら、昔の自分と今の自分を比べられて、母にブツブツと嫌味を言われたことが何度もあります。それが私の中ではすごくプレッシャーであり、しかし、どうしても、もっと母に認められたいという気持ちに強くこだわっていたと思います。(バスケット 女)
こうした、親の目を意識した子どもの行動は、高校生などの場合は、プレーそのものにも少なからず影響を与えるために、強豪校の指導者は、保護者対策も怠らない。
要するに、選手、場外(父兄)の心理状態を安定させる。場外…結構ありますからね。あんな作戦しやがって、とかね。特に野球専門から見ると、(野球を)知ってる人が見ると、あるんじゃないですか。
高校野球にとって、コレは大事な部分なんですけどね。親との関係を近づけ過ぎないように、また遠ざけすぎないようにうまく。(高校 野球 指導者)
(杉野昭博『スポーツ障害から生き方を学ぶ―ケガをめぐる競技者たちの語り』2010年 生活書院より抜粋)転載はしないでください