自立と障害者自立支援法を問う 横須賀俊司(県立広島大学) 1 確認すべきこと (1)財源不足と本当にいえるのか?  ・03年度追加歳出(補正予算)1兆4221億円(うちイラク支援費は1188億円)  ・03年度ホームヘルプ総事業費約760億円(国負担分は2分の1の380億円)  ・03年度の不足額は128億円、04年度は284億円  ・施設費用と居宅費用の不均衡を是正するべきではなかったか             居宅生活支援費      施設訓練等支援費   03年度予算 515億8800万円 2696億7900万円   04年度予算 601億8800万円 2871億1800万円   05年度予算案 930億900万円 2901億6500万円  ・施設は義務的経費なのに在宅は裁量的経費  ・施設障害者と在宅障害者の人口比(平成17年版障害者白書)   身体障害者   324.5万人(在宅):18.1万人(施設)   知的障害者      22.1万人(在宅):12.1万人(施設)   精神障害者(20才以上) 209.5万人(在宅):34.1万人(施設) (2)障害関連予算の国際比較(対GDP比)  ・スウェーデン(約5%)、イギリス(約2.5%)、ドイツ・フランス(約2.1%)、ア  メリカ(約1.2%)、日本(約0.7%) 2 自立支援ということ (1)自立とは何か  ・経済自立と身辺自立 (2)自立から自律へ  ・自己決定、自己選択へ (3)自律生活のスタイル (4)施設と家族の限界  ・福祉的配慮と愛情 3 自立支援法のポイント (1)三障害の福祉サービスの一元化 (2)サービス提供主体を市町村に一元化 (3)福祉サービス等の費用をみんなで支え合う仕組みの強化  ・利用したサービスの量や所得に応じた「公平な負担」  ・国の財政責任の明確化 (4)就労支援の抜本的強化 (5)公平なサービス利用のための手続きや基準の透明化、明確化 3 障害者自立支援法の事業内容 (1)介護給付 (2)訓練等給付 (3)自立支援医療 (4)地域生活支援事業  ・相談支援事業等、コミュニケーション支援事業等、移動支援事業、地域活動支援セン  ター事業等 (5)補装具 4 給付決定のプロセス (1)障害程度区分の一次判定  ・106項目によるアセスメント (2)二次判定(市町村審査会)  ・医師の意見書 (3)障害程度区分の認定 (4)勘案事項調査  ・地域生活、就労、日中活動、介護者、居住など (5)サービス利用意向の聴取 (6)障害者介護給付費等不服審査会 5 費用負担 (1)定率負担  ・生活保護世帯 0円  ・市民税非課税で年収80万円以下 15000円(障害基礎年金2級相当)  ・市民税非課税で年収80万円以上 24600円(障害基礎年金1級相当)  ・市民税課税世帯 37200円 (2)社会福祉法人の減免  ・資産350万円以下で15000円と24600円の人のみ該当  ・社会福祉法人が提供するサービスを利用する場合には上限が半額 6 自立支援法の問題点 (1)権利性がない  ・支援費の理念である自己選択、自己決定が謳われていない (2)障害程度区分  ・介護保険の調査項目が流用→流用を正当化する理由の疑問、医療的観点による評価  ・上限のある義務的経費 (3)二次審査における医師の意見書 (4)市町村審査会  ・書面審査、審査時間、審査メンバー (5)費用負担算定の対象範囲  ・「扶養義務者の負担は廃止する」とあるが「生計を一にする家族の負担を勘案」  ・支援費以前は生計中心者、支援費は親きょうだいは扶養義務者からはずれていた  ・障害者控除の適応を受けなければ別世帯とみなす (6)負担上限額  ・自立支援給付、ホテルコスト、自立支援医療、地域生活支援事業、補装具の合算では  ない (7)利用対象者の範囲  ・難病の人や発達障害者は含まれない 7 現在、生じてきている問題点 (1)利用時間数の削減  ・自治体による時間数削減→東京都、宮城県名取市 (2)利用控え  ・定率負担のために支払えなくなっている  ・厚労省は利用中止は0.39%と発表    →データ公表の26府県中14県のデータのみの集計、在宅サービスの利用中止が対    象になっていない、大阪府やDPIの調査では1割以上減となっている (3)事業所運営  ・登録人数→利用日数・報酬単価の引き下げのため収入減(京都府内では平均約1割の  1400万円減) (4)地域格差の拡大  ・定率負担の軽減措置、医療費軽減措置などをやる自治体とやらない自治体