障害学 理論形成と射程
著者:杉野 昭博
ISBN978-4-13-051127-8
初版:2007年06月20日, 判型:A5, 304頁
韓国語版:2010年11月30日, 鄭喜慶(ジョン・ヒギョン)訳
2刷:2014年11月20日
東京大学出版会 本体3800円
内容紹介
アメリカやイギリスで誕生,発展してきた「障害学」とはどのような理論と実践なのか.「社会モデル」理論をはじめ,障害をめぐるさまざまな考え方や論争点,成果と課題についてわかりやすく解説し,日本における「障害学」の可能性を探る.
というつもりで、かなり思い入れを込めて書きました。そしてほとんど販売のことまで頭が回らなくて4000円という値段になってしまいました。ぜひ大学図書館や地元図書館に購入希望をお願いします。以下、Amazonの「なかみ検索」のようなものをつくってみました。クリックすると各章最初の節の本文の全部または一部が読めます。
誤記訂正
pp66,77,289 Society of Disability Studies → Society for Disability Studies
初版の誤記訂正は上記の1点ですが、2014年11月2刷りの発行に際して、上記誤記以外にも表記の訂正をおこないました。
主な訂正は、横塚晃一『母よ!殺すな』の引用頁をすずさわ書店版から生活書院版に変更したほかは、わかりいくい表記等を改善しました。
初版をご使用の際は、2刷りでの初版からの訂正一覧をご利用ください。
主要目次
1章 障害学を担うのは誰か?
- 1 障害学は当事者のもの?
- 2 「非障害研究者」論争
- 3 日本の障害者運動で論じられたこと
- 4 「研究の自由」論争
- 5 研究と運動の線引き問題
- 6 「当事者の視点」はいかに担保されるのか?
- 7 「実践」としての障害学会
- 8 「観衆」としての当事者とアクセス
2章 障害学とリハビリテーション学――ICFをめぐる論争
- 1 障害学のインパクト
- 2 国際障害分類改訂の経緯
- 3 障害学からの批判――ファイファーによる批判
- 4 WHOの改訂チームによるファイファーへの反論
- 5 論争が障害学に与えた影響――社会モデル理論の分類と整理
- 6 死人に口なし
3章 マイノリティ・モデルと普遍化モデル――アーヴィング・ゾラの障害学
- 1 「アメリカ障害学の父」
- 2 ゾラが語る個人史とアイデンティティの探求
- 3 障害アイデンティティとマイノリティ・モデル
- 4 医療化批判と自己決定
- 5 障害の普遍化戦略
- 6 ゾラのラディカリズム
4章 社会モデルの広がりと再編――イギリス社会モデルの展開
- 1 混迷する論争と文脈依存性
- 2 社会モデルの功績
- 3 オリバー障害理論の真価――労働の近代化と障害
- 4 オリバー後の社会モデル論争――内在的批判と外在的批判
- 5 社会モデルの拡張作業――インペアメントの社会学
- 6 社会モデルの再編成――唯物論的モデルと観念論的モデル
- 7 「個人的経験」の社会性
5章 「障害」の政治と障害学――マイノリティ・モデルの展開
- 1 アメリカ障害学に関するいくつかの疑問
- 2 「公民権」としての障害者の権利
- 3 「人種」としての障害者――アメリカ社会モデルの淵源
- 4 リハビリテーション理念と「メルティングポット」
- 5 戦後リハビリテーション施策の展開
- 6 「貧困との戦争」におけるリハビリテーション理念の挫折
- 7 自立生活運動と利用者の権利
- 8 リハビリテーションから公民権へ
- 9 障害者権利運動――504条施行規則からADAへ
- 10 消極的な司法判断
- 11 障害文化――マイノリティの主張
- 12 障害の政治とマイノリティ・モデル
6章 障害学の課題――日本における論争点
- 1 日本の障害学――国際比較の視点から
- 2 障壁としての「家族」――脱「家族」と障害者福祉改革
- 3 「能力主義」をめぐる問題と差別禁止法
- 4 フェミニズム理論と障害学――「平等派対差異派」論争
- 5 障害学の実践課題――実践モデルとしての社会モデル
- 6 「利用者主権」と「当事者主権」――個人モデル実践の改革に向け